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2023/10/24
【Experts Review ∥ 橋本ヒロカツ】: 都内のレコーディングスタジオを経営する作曲家・音楽プロデューサーの橋本ヒロカツ氏がべイヤーダイナミックとの関わりやエピソードを語ってくれた。

“非常にプレゼンスもあり、何よりも声の特徴がよく出る”
ベイヤーダイナミックとの出会いは?
橋本 : 20年ほど前の話にはなるのですが、うちのアーティストのホールコンサートで当時依頼したPA会社がいくつもの様々なマイクを持ってきてくれて、「どのマイクが合うかな?」という中、ベイヤーのM 88が合うんじゃないかとなって、使ってみたのが、ベイヤーのマイクについて詳しく知るきっかけとなりました。僕はレコーディングスタジオをやっているのでレコーディング用のマイクは、たくさんあるんですけど、ライブ用のマイクはそんなに多く持っていませんでしたので、その時に様々なメーカーのライブ用マイクをいろいろ試させてもらいました。リハ中にとっかえひっかえ、試している中、うちのアーティストには目に見えて「あっこれがいい!」っていう感じだったのがM 88だったのです。
そのコンサートは2000人規模のホールだったのですが、その空間で感じたのが、非常にプレゼンスもあり、何よりも声の特徴がよく出る、突出して一つだけ変わったマイクだなというのがその時鮮明に感じた点です。それに加えて、ワイヤードな点も僕はすごく気に入りました。それがはじまりですね。その後、通常のライブでも使えるようにM 88を2本購入して、その何年後かには、ベイヤーがアニバーサリーモデルを出すとの案内をもらったので、リボンマイクのM 160を弾き語り用にスタジオに入れました。

“個性的な声だったり特別にプレゼンスのあるような声の人にはすごい大きな武器になる”
M 88 / M 160のどういうところが秀でていると感じましたか?
橋本 : ベイヤーのマイクは誰にでも合うっていうよりは個性的な声だったり特別にプレゼンスのあるような声の人にはすごい大きな武器になるなとすごく感じたんですね。ですからベイヤーのマイクを使っている著名アーティスト達のように何かの個性があったりだとか、人に訴えかけるような要素をたくさん持ってる人にすごく向いてるマイクだと思います。他メーカーのマイクだと個性的な声であればある程、その個性が埋もれてしまう一方、ベイヤーは生音で持っている個性をそのまま機械の中に取り入れてくれて、それを皆さんに聞かせることができるので、そういう点では特別なマイクなのかなと思います。
プリアンプに関しても、ただ単に原音再生するのではなく、その機材ならではの存在感をしっかり捉えてそれを表現してくれる、つまりミュージシャンのいいところを選択的に引き出してくれる機材が僕はいい機材だなと思ってます。ただすべての機材が個性的だと組み合わせが膨大すぎて、扱いづらくなるのですが、マイクとかマイクプリに関してはそれぞれが個性があってそれをマッチングさせたときにすごく素敵な力を発揮してくれるようなものだと思います。

“ナチュラルで定位もわかりやすく、リバーブの距離感などもとりやすい”
他につかったことがあるベイヤー製品はありますか?
橋本 : マイクに関してはTG V70を試しました。TG V70はとても現代的なマイクだなという印象です。それこそM 88の伝統的なイメージとは対照的で、モダンで使う人を選ばない気はします。僕の意見ですが、このTG V70は男性ボーカルに合うんじゃないかなと思います。周波数全体の出方を考えると、ちょっと甘い声だったり、個性的な感じの人には合うと思いました。
ヘッドホンはDT 990 PROを持っていてよく使ってます。このヘッドホンは非常にナチュラルで定位もわかりやすく、リバーブの距離感などもとりやすいです。装着感も決して重くないし、ある程度着けてても決して嫌にならないし、イヤーパッドがベロア調なので汗で滑るようなこともないです。上位機種のDT 900 PRO Xも試してみましたが、よりバランスと定位がよく本当にとてもいいヘッドホンだと思いました。

【橋本ヒロカツ|プロフィール】
作曲家、音楽プロデューサー、映像作家
1980年代から音楽と映像を合わせた仕事を始め、日本では黎明期のミュージック・ビデオや環境映像などのプロデュースや監督を行い、多くのミュージシャンと関わり、2000年に自身の製作とレンタルスタジオとしてレコーディングと映像製作のスタジオをオープン。
スタジオとインディペンデントレーベルのオーナーとして、アーティストプロデュース、エンジニア、作曲家、CMなどの映像監督として活動。アナログ機器へのこだわりと共に、シンガーの声に特別なプレゼンスを与えてくれるとbeyerdynamicsのマイクを愛用している。