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2024/01/17

レビュー記事

【Experts Review ∥ 山口照雄】レコーディングエンジニア・プロデューサーの山口照雄氏が語る、ベイヤーダイナミックのDTシリーズ・モニターヘッドホン(DT 770 PRO / DT 900 PRO X / DT 1770 PRO / DT 1990 PRO)

普段使っているベイヤーのヘッドホンはどのモデルですか?

“基準となる要素があって、それがDT 770 PROだと、基準をクリアできているかすごくわかりやすい。”

山口照雄:定番のDT 770 PRO (250Ω)を普段仕事で使っています。 DT 900 PRO Xも持っていてこちらは快適なのでリスニング用として使ってます。

仕事でDT 770 PRO (250Ω)を使っているとのことですが、具体的になぜDT 770 PROがいいか教えてください。

山口照雄:DT 770 PROが仕事で使える一番のポイントは、ノイズが本当にわかりやい点です。ギターのノイズやボーカルのリップノイズ、「カチッ」っていう音はスピーカーじゃ感じないけどDT 770 PROで聞くとよくわかるんです。なので、ノイズをカットする際の仕事効率を上げてくれるので、作業に欠かせないヘッドホンとして愛用しています。他のヘッドホンでは聞こえないノイズが良く聞こえます。もう、2-3年は使ってますね。使いだしてから、海外の動画とかを見ると、自分のヘッドホンを使っているアーティストやエンジニアが多いことに気づきました。なんか共通点があるってうれしいですよね。あとは、やっぱり仕事の最終段階の確認のところで、DT 770 PROでチェックすれば、安心して仕事を終わらせられるっていうのも大きなポイントです。

やはり自分の中で、ミックスをチェックするときなんかに、基準となる要素があって、それがDT 770 PROだと、基準をクリアできているかすごくわかりやすいので、DT 770 PROでチェックして大丈夫なら安心して仕事を締められるっていうのは推しポイントです。

DT 900 PRO Xも持ってますが、これは聴くには快適すぎますね。開放型なのに低音もしっかり真ん中で鳴っていて、開放型でありながら、芯がある凄く聞きやすいヘッドホンという印象です。ただ、個人的にですが、これを仕事で使用すると快適すぎて全部OKになってしまうので、仕事で使用するのはDT 770 PROの方です。(笑)DT 900 PRO Xで耳慣らししてから、DT 770 PROを使ってチェックすると、「やっぱりベースがでかいとか、リバーブが足りないとか」微々たる感覚なんですが、自分の基準に一致しているかどうかがより明確にわかります。ただ単にいい音で音楽を聴くためではなく、エンジニアとしての仕事道具として非常に役立っています。

“DT 1770 PROはサウンドに品があって、聴いたベイヤーのヘッドホンの中で一番使いたいと思いました。”

DTシリーズ最上位機種”DT 1770 PRO / DT 1990 PRO”は聞いてみていかがでしたか?

山口照雄:DT 1770 PROはJARECのヘッドホン試聴会の時にも聴きましたが、サウンドに品があって、聴いたベイヤーのヘッドホンの中で一番使いたいと思いました。本当に細部まで聞こえて、質が高く魅力的ですが、同じ250ΩのDT 770 PRO でも十分使えているので今はDT 770 PROのままでいいかなって感じです。(笑)

DT 1990 PROはオープンの味がすごく出ていて、低域も含め全体的にサウンドが耳の周りに広がるから、サラウンド感がすごくあります。音場がとにかく広いですね。ベースが真ん中にあり、パワフルな印象があったDT 900 PRO Xと比べても、音のなり方の違いが良くわかります。どのモデルもやっぱり「ベイヤーの音」がしっかり鳴ってます。

スカッとしていたり、モワっとしてこもった感覚もなく、角がなくバランスがいいから、小さい音で聴いてもちゃんとバランス良く聞こえる。”

山口さんが感じる「ベイヤーの音」とはどのような特徴の音ですか?

山口照雄 :「ベイヤーの音」って言葉で表現するのは難しんですけど、まず言える特徴として「角がない」っていう点だと思います。他メーカーのモデルの中には、ドラムを叩いた時なんかに「バシーン」ってう角があるサウンドのものがありますが、ベイヤーはそこにアナログ感があって、例えるならどこかに綿がある感じです。音色ではないんですけど、音の響きや匂いのバランスがとてもいいです。スカッとしていたり、モワっとしてこもった感覚もなく、角がなくバランスがいいから、小さい音で聴いてもちゃんとバランス良く聞こえる。音量下げても、しっかり音楽として成立するのがベイヤーのヘッドホンは一貫してある。ベースがちょうどいいくらいの距離感で前にいて、ピアノがここにいて、歌がここってところの音像がちょうどいいのがとても快適です。

“何年も経験を積んで、いいと思っているものができて初めて、仕事で使えるツールの判別ができるようになると思います。”

どのような方にベイヤーのモニターヘッドホンをすすめたいですか?

山口照雄 : DT 770 PROはエンジニアでミックスする、ベテランの方に勧めたいです。やっぱり仕事でしっかり使えるツールですし、長く使わないと自分のスタンダードが出来上がらず、ヘッドホンの良さがフルに理解できないからです。何年も経験を積んで、いいと思っているものができて初めて、仕事で使えるツールの判別ができるようになると思います。その点、パーツの交換とかもできるDT 770 PROは長く使っていけるパートナーとしてお勧めです。サウンドが良かったり、聴いて快適なツールでの作業を好むエンジニアは、DT 900 PRO Xのような聴いて快適なヘッドホンの方がお勧めできます。


【プロフィール|山口照雄

1970年〜1985年 日本ビクター入社、音楽事業本部録音課(現ビクターエンタテインメント青山スタジオ)に配属される。
アイドル歌手を中心にピンクレディー、松崎しげる、太川陽介、また流行歌の王道であった橋幸夫、青江三奈、マヒナスターズ等のレコーディングに携わる。
1985年〜2005年 スタジオシャングリラ設立
レコーディングスタジオの経営・音楽制作を中心に活動
1990年〜 株式会社茶屋 設立 TeaHouse / M&TMusic
レコーディングエンジニアとして生楽器による同時録音で演歌・歌謡曲(鳥羽一郎、瀬川瑛子、都はるみ、伍代夏子、藤あや子、天童よしみ、三山ひろし、小桜舞子 等々)の録音に携わり現在に至る。


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