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2023/11/22

レビュー記事

【Experts Review ∥ 河野祐亮】ジャズピアニストとして活躍する河野祐亮氏がリボンマイク M 160を徹底レビュー

”以前からハイパーカーディオイドのリボンマイクがとても気になって探していました。”

まずM 160をレコーディング&配信に使用することになった経緯を教えてください。

河野氏:普段、コンデンサーマイクをセッティングしてレコーディングやグランドピアノの演奏配信を行っていたんですが、コンデンサーマイクは、綺麗だけどオンマイクになればなるほど、サウンドが硬くて、「カリンカリンな音」になるんですよね。僕は、音楽的には3人の中で主役になってメロディーラインをやったりするので、ピアノの音が抜けてほしいんです。コンデンサーマイクだと音がちょっと硬いんです。ジャズってどちらかというとダークで柔らかい音ですし、アコースティック楽器の音楽なので無指向性マイクで録れるのが一番いいんですが、それでもそれぞれの楽器をパラでレコーディングして、ミキシングするときに柔らかく芯があって抜けのいい音が欲しかったんです。

そういう理由で、実はリボンマイクが一番好きなんですが、基本的にリボンマイクは双指向性のものが多く、今配信で使ってる部屋が、双指向性に向いてなく、以前からハイパーカーディオイドのリボンマイクがとても気になって探していました。サンレコフェスのベイヤーブースでM 160を紹介していただき、試聴してよかったので、実際レコーディングや配信で使用してみることになりました。

”ジャズピアノのサウンドはもっと柔らかいので、そういう音が欲しかったんです。”

実際にM 160をレコーディング・配信で使用してみていかがでしたか?

河野氏:その流れで早速配信で使用したんですが、視聴者からもめちゃめちゃ音がいいと評判がいいんですよ!そのアーカイブものこしてて、こんな感じで録れました。(その場でスマホでアーカイブを再生)こういう感じで、めちゃめちゃ綺麗に音がとれてるし、みんなも良いと言ってくれるので、それもあって、M 160めちゃめちゃいいなーって思ってたところでした。(笑)

前から、自分の音を自分で録って配信だったりをしてきたバックグラウンドがあるので、良さがすごくわかりやすかったです。

僕のバンド「河野祐亮ピアノトリオ」の最新作は、初めてレコーディングスタジオを利用せず、正木彩生ミュージックスクールのこの部屋(ピアノ録り)と隣の部屋(ドラム録り)と廊下(ベース録り)で扉ギリギリ閉めるくらいの感じでレコーディングしました。(笑)

自分でミキシングもしました。自分でレコーディングするバックグラウンドがあったからこそ、M 160みたいなマイクないかなって思っていました。実は他メーカーのいろいろなマイクを試しましたが、全部なんか硬いんですよ。抜けているんだけど、安っぽい硬さを感じていました。ジャズピアノのサウンドはもっと柔らかいので、そういう音が欲しかったんです。単純に音の音色の広がりみたいなのは、コンデンサーや無指向性マイクで録れるんですが、アタックの部分でうまくきれいに録れるものがないかと思ったときに、このリボンマイクをつかってみたらすごい良かったです

”M 160はミキシングするのに使いやすい”

トランジェントの捉え方が丸いのが良くて、このアタック感が欲しいんですよね。高級なコンデンサーマイクは高解像度である一方、高域が耳に痛いことがありました。そのような高域はミックスでも使いづらくて難しいです。そこにずっと悩んでいたのでいい音で録れてよかったです。

リアルなサウンドのレコーディングを追求すると、ステレオで2本だけマイクを立ててバンド全体を録るのが本当の意味ではナチュラルな音になると思うんですけど、現実的には様々な事情があって難しく、「本当のリアル」は相当困難だと思ってます。だから求めるべきは、マイク選びやマイキングの時点で、最終的な音作りを想定しなければいけないと思うんですね。マイクの選択にミキシングしやすいというのは大事なんじゃないかなと思います。何本もマイクを立てるのであればミキシングしやすいマイクやマイキングが大事で、そういう意味では、ピアノのレコーディングにはいい結果が出たんじゃないかなと思います。M 160はミキシングするのに使いやすい(特にピアノには)と思いました。

今まさにこの空間で弾いて聞いている音がそのままの形でレコーディングされて出ている感覚

マイキング、プロセッシングやEQなど、こだわりポイントはございますか?

河野氏:僕はマイクの音をそのまま使いたいですね。EQもコンプもかけないです。これはジャズだからだと思います。ジャズのようなサウンドには基本的にEQもコンプもかけないで、そのままうまく機能するようにマイク選びやマイキングをします。EQをかけると結局音が細くなったりするじゃないですか。だからマイクサウンドのまんまです。僕の使い方なんですけど、オンマイクと空気が録れる(全体像が録れる)マイクがあれば十分だと思います。特に、M 160のようなリボンマイクだと、今まさにこの空間で弾いて聞いている音がそのままの形でレコーディングされて出ている感覚があります。普段コンデンサーマイクを使って配信している時は、ヘッドホンからでるサウンドがいかにもデジタルのサウンドを聞いているかのようで基本的にヘッドホンを外しているんですよ。ただ、ベイヤーのM 160使うときはヘッドホンつけて演奏しても全然違和感ないので、つけて演奏しても気持ちが良いです。今後はM 160に合うマイクプリも探してみたいですね。


【河野 祐亮/Yusuke Kono|プロフィール】

2014年秋にNYから帰国。『河野祐亮ピアノトリオ』を結成。

2015年にSAPPORO CITY JAZZ PARK JAZZ LIVE CONTEST 2015でグランプリを獲得。

2016年7月から初の海外ツアーであるヨーロッパツアーを行い、世界三大ジャズフェスティバルの1つ『ウィーンジャズフェスティバル』(オーストリア)、ヨーロッパを代表するクラブ『ロニースコッツ』(イギリス)へ出演し喝采を浴びた。

2020年からのコロナ禍でもオンライン形式のライブなどで、ピアノトリオとして積極的に音楽活動を行い、

2022年11月に4枚目のアルバムとなる「Episode I」のリリースライブとして「丸の内COTTON CLUB」に出演を果たす。


M 160の製品情報はこちら

●主な適応楽器 : ドラム(シンバル・オーバーヘッド)/ギター(アコースティック・アンプ)/弦楽器

主な使用環境 : レコーディングスタジオ

●特長

・ハイパーカーディオイド採用により110°でのノイズ抑制が25dB低くなり、背後からのノイズをより少なく捕らえることが可能

・優れた低音域のレスポンス、暖かい中音域とシルキーな高音域で原音を優しく、上品に再現

●マイク周波数特性 : 40 – 18,000 Hz

*写真は今秋展開予定の新デザインのもの